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あるべき姿の要件

「目標」は目標の体をなしていない

「目標の根拠がわからない」という嘆きを、よく耳にすることは以前書きました。

kakemana.hatenablog.com

こういう嘆きが出てくるということは、目標に納得ができていない、ということです。もう少し言うと、目標達成に全力で取り組めていない、ということでしょう。もちろん、いい加減に取り組んでいるとは思いませんが、心のどこかで、疑念がある。疑念があるとすると、それは果たして「目標」と言えるのか。どちらに向かうのかという目印くらいにはなりますが、本気で目指さないものは目標とは言えないでしょう。

だとすると、多くの会社で、一応、「目標」と呼ぶ目印はあるけれど、本気で目指していない。「目標」を達成したいという意欲とは別の何かが人々を動かしていることになるのでしょう。やはり、それは、「仕事だから」ということでしょうか。生活のためには、当然仕事をしなければなりませんし、給料をもらっている以上、仕事をやり遂げる責任もある。悪いことではないと思いますが、真面目な日本人とはいえ、その一所懸命さには限界もあるでしょう。

そんな状況で、「目標」という言葉を「あるべき姿」と言い換えたところで、それだけでは何も変わりません。そこで、「あるべき姿」が、本当に心から目指そうと思えるもの、成果が上がるものとして機能するためには、どのようなものであれば良いのかについて、考えてみます。ややこしいのですが、「あるべき姿」のあるべき姿は何か、ということです。

「あるべき姿」はどうあるべきか

「あるべき姿」とは、価値観を具体化したものです。どのようなものであっても間違いとは言い切れませんし、理由づけはいかようにも出来てしまいます。

だからといって、マネジャーとして描く「あるべき姿」は当然ですが、何でも良いわけではありません。どういうものでなければならないか、について整理してみましょう。

まず、あるべき姿はマネジャーが一人で実現するのではなく、部下を始めとする集団で取り組むものです。したがって、その集団が「よし! 実現しよう!」と思えるものでなければなりません。その集団が目指すものとして相応しいものでなければならないのです。またここで難問が降りかかります。その「集団が目指すものとして相応しい」とは果たしてどのようなものか、ということです。プロジェクトを通じて、いろいろな方と「あるべき姿」について議論しましたが、一般化することが本当に難しいものです。それでも何とか定義してみると、次のようなものになりました。

集団にとって相応しい「あるべき姿」とは、メンバーが納得できるものである。そして、その納得は、「達成しやすい水準」とか「影響を与える要因が考慮された数値」などの外形的な基準から生まれることはない。マネジャーと部下との間に信頼関係があることを前提として、マネジャーが現状をどのように捉え、どんな未来を実現したいのか、それは何故か、こういったことがはっきりと表現されて、はじめて部下たちの納得が得られるものである。

次に、マネジャーの「あるべき姿」は、具体的な成果でなければならないでしょう。例えば、工場において、「作業の効率を上げる」ことがあるべき姿だとすると、あまりにも抽象的すぎて、上がったのか上がらなかったのか、仮に上がったとしてもそれが本当にあるべき水準かどうかわかりません。成果を上げることがマネジャーの使命である以上、あるべき姿は、その成果がはっきりとわかるものでなければならないでしょう。

部下たちが納得して、成果として明確であれば良いかというと、それだけでは足りません。つまり、成果の大きさがまったく考慮されていないからです。極端なことを言えば、成果が上がったのに、会社が存続しなかったということでは困ります。逆に、現実的に実現不可能な水準はダメですが、そうでなければ、あるべき姿は高ければ高いほど良いのです。部下の納得が得られれば、あるべき姿の水準が高すぎて困ることはありません。長期的に成果を上げるためには、人々と組織の成長が不可欠ですが、その成長の原動力は、難しい水準に挑戦し、熟慮や試行錯誤、メンバー同士が協力し合うといった行動を積み重ねることです。そのためにも、あるべき姿は挑戦を伴うような高い水準でなければならないでしょう。

いかがでしたでしょうか。ここまで考えが赴くままに書いてきました。最後に、あるべき姿の要件、つまり、「マネジャーが描くあるべき姿とは、いかなるものでなければならないか」について、簡単にまとめて、今回は終わりにします。

マネジャーが描く「あるべき姿」は、次の3つの要件を満たすものでなければならないでしょう。

  1. 物語がある
  2. 明確である
  3. チャレンジングである

各々については、また別の回でまとめてみます。