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× マネジメント

マネジメントの力で良くしてみよう

規律を守る

今日は、マネジメントで最も大切な「規律を守る」ということについて書きます。このカテゴリーはこれが初めてなので、「規律を守る」の基本的な考え方を整理してみます。
組織が成果を上げられるかどうかは、メンバー各自が「任された役割をどれだけ果たせるか」にかかっています。成果は集団で作り上げられるわけですから、各々の「やるべきこと」をきちんとやり遂げる、つまり「規律を守る」必要があるのです。
 
 
一般的に、「規律」には堅苦しいイメージがあります。軍隊における義務や規則などが思い起こされるからです。ここでいう「規律」とはそうではありません。義務や規則は「やらなければならない」か「やってはいけない」という2つの司令で集団を統制するものです。どちらにしても、人を外圧によって強制することで、特定の行動をさせるように、人を操作するものですから、人は求められた水準以上の行動をしようとするものでもありませんし、長続きもしません。そんな行動では成果が上がりません。
 
では規律とは何か。
マネジメントでいう「規律」とは組織の価値観です。つまり、「規律を守る」ということは、組織が大切にしていて、何よりも優先していることに従って行動するということです。抽象的なので、多くの人が知っている例を挙げてみましょう。東京ディズニーランドのカストーディアル・キャスト(清掃業務員)のお話です。

孫子薫氏の著書『ディズニーの魔法のおそうじ』によりますと、カストーディアル・キャストは、担当エリアを15分ごとに巡回するよう決められています。この本を読んで以来、東京ディズニーランドに行くたびに、私も注意深く彼らの仕事振りを見ていますが、誰ひとり決められてことを嫌々やっているように見える人はいません。彼らは、汚れていてもいなくても進んで定期的に掃除をしています。「夢の国」とはいえ、そこまでしなくてもよさそうですが、彼らは園内をきれいにして美観を保つためだけに、業務を行っている訳ではありません。彼らを突き動かしているのは、「お客様の安全と安心を常に確認する」という価値観です。何か問題が生じているお客様がいないか、設備の不具合がないかなどを見て回っているのです。

このカストーディアル・キャストの行動から、「規律を守る」ということを考えてみます。

 

規律には、業務の最低水準を担保する一方で、どこまで追求しても「やりすぎ」はないという性質があります。一定の水準で業務をやらせるには、指示や命令などでも可能です。しかし、これらは求められている以上のことを積極的に行う力がほとんどありません。「やれ」と言われているからやっている訳で、「もっとやろう」とはなかなかなりません。一方で、価値観で統制されているカストーディアル・キャストは、皆が進んで15分で巡回することを実行しています。それだけでなく、迷子になって泣いている子どもを見つけたら、笑顔でシールをプレゼントして保護者を探したり、長蛇の列で退屈しているお客様の前で面白いモップさばきを見せて楽しませたりしています。

また、規律を守ることによって、誇りを持つことができます。一般的に清掃業務は人気の職種とは言えません。『ディズニーの魔法のおそうじ』の著者である安孫子氏もカストーディアル業務への配属を言い渡されたとき、「愕然とし、強く失望した」と述べています。しかし、価値観を共有すると意識が変わります。つまり、カストーディアル業務は、掃除をしているのではなく、お客様に最も近いところで、安心と安全を提供しているのだということです。そう考えると行動に大きな意味が見出せますよね。ディズニーランドという夢の国でも、単に裏方として清掃をするだけの業務として認識されていたら、人気の業務にはならないでしょうし、業務の品質にもきっと低い水準でのバラツキがあるのではないでしょうか。

さらに、規律は、人の思考を「どうすればできるのか」に集中させるます。価値観に基づかず、単に15分に一度巡回して掃除をすることがルールとして義務づけられた場合には、きっと、「果たして、15分に一度巡回する必要があるのか?」という疑問がキャストの頭のなかに湧くのではないかと思います。たいしたゴミが落ちてもいないのに巡回している訳ですから。なかには、「15分に一度なんて必要ない」と考えて、巡回のペースを落とすキャストが出てきても不思議ではありません。指示や命令、ルールなどには、表面的な行動しか示されていないので、どうしても、「やるべきか、やらなくてもよいのではないか」という思考が生まれてしまいます。しかし、価値観はそうではありません。「お客様の安心と安全を確認する」ことは、やるべきかどうかなどと疑問に抱くことではありません。「そうでありたい」ですし、「そうであるべき」と考えるからです。すると、人の思考は、「どうすればお客様の安心と安全がより確認できるか」にフォーカスを向けるようになります。

「規律を守る」とはこういうものではないでしょうか。