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MECEの使い方

MECEの使い方

MECEとは

何かを論理的に細分化するとき、MECEという枠組みを使うことがあります。課題を分けて、「やるべきこと」を見出すときも同じです。このMECEを使いましょう。定期的にビジネス書を読む方は、よくご存じと思いますが、念のため、MECEを確認しておきましょう。MECEとは、「ミッシー」とか「ミーシー」と読んで、集合を分けるときの技術です。抽象的な概念なので、難しいのですね。つまり、かたまりをどう分けていくのかを示したものです。何の略かを聞くと、普通、理解が進むのですが、MECEの場合はそうでもありません。MECEは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略です。これを知っても、難しい単語ばかりで、それほど理解が進まないですよね。
MECEを簡単に言い換えれば、集合を「漏れなくダブりもなく」分けていく、ということです。シンプルな例にするとよくわかります。例えば、「お客様」という集合を分ける場合、「女性」と「男性」に分ける。これは、すべてのお客様が漏れなく、必ずどちらかの区分に入ることになりますので、MECEになっていることになります。
では、MECEになっていないケースはどうか。極端な例ですが、「東北地方在住」と「過去1年以内に購入履歴がない」とに分けた場合、ある一人のお客様が、どちらにも該当しなかったり、両方に該当したりすることがありますので、MECEになっていません。
MECEにすることによって、重要な課題が漏れることを防ぎつつ、広がりを持たせながら課題を分けることができます。そうすれば、あるべき姿を実現するための「やるべきこと」を見出しやすくなります。「MECEになっているか」とつぶやきながら課題を整理してみましょう。

漏れがなければ何とかなる

実務で、MECEになるように課題を分けていくのは、簡単ではありません。それは論理的な思考が必要になるからです。思いつきや感覚で行動することができない人間はいないでしょう。それが人間の本能だからです。論理的に考えながら、MECEになるように集合を分けていくのは、慣れが必要になってきます。マネジメント改革プロジェクトで、管理職の方々に、課題を分けるための「イシューツリー」を作ってもらっています。作成例などを見せずに、プロジェクト目標達成のためのツリーを作っていただいた場合、最初からMECEになって、ツリーが出てくることはほとんどありません。なかには、作成例をお見せしたり、何度も具体的にフィードバックしても、漏れやダブりが解消していかないこともあります。こういったケースでは、見出したすべての「やるべきこと」を実行して、仮に意図したとおりの結果が得られたとしても、目標には到達しないということが起こります。「目標と現状のギャップを埋める」という課題から出発していますので、「やるべきこと」を完遂しても目標に到達しないのであれば、「分けた」ことにはなりません。「やるべきこと」が積み上がらなければ、運任せになり、マネジメントではなくなってしまいます。
そこで、課題の階層を上がったり下がったりしながら、サポートになる質問をして、何とか十分な「やるべきこと」を積上げていただきます。このとき、厳密なMECEにすることにはこだわらないようにしています。もう少し言うと、経験則では、厳密なMECEにこだわらなくても成果を上げることはできます。「やるべきこと」が十分に積み上がれば何とかなるのです。ダブりがあったとしても漏れがなければ「やるべきこと」は見いだせるものです。

MECEの限界

課題を分けきって、「やるべきこと」が出そろったとき、管理職の方に改めて、「目標達成できそうか」と問いかけます。管理職から返ってきた答えを聞いたとき、何となく目標達成の手ごたえがわかります。言葉では説明できないのですが、設計図を見て、実際に完成した姿がはっきりと想像できているような感じです。ときには、「まだ重要なことが抜けていませんか?」とか「本当に達成をイメージできていますか?」などと、しつこく聞いて、確認してみますが、自分たちで挙げた「やるべきこと」を本当にやり切ろうとしている人たちの言葉には、「強さ」を感じます。
この感覚は、課題を分けるときに、MECEになっていなくても現れます。過程を知らない人にイシューツリーを見せたら、すぐに「論理的に分けられていない」と指摘されてしまうような「おそまつな」ツリーであってもです。
MECEに限らずですが、技術は何かをうまくやるために機能しますが、人が決断をしたり、確信を得たりするような、感性を必要とする場面では、それほど機能しないのだと、つくづく思います。たとえ、MECEになるように課題を分けて、やるべきことを抽出しても、「できそうだ」と確信できなければ、実行して成果に結びつけることはできないでしょう。技術は大切ですが、少しくらい技術面が劣っていたとしても心理で何とかなる場面はいくらでもあるのだと思います。人が力を発揮するには、理性と感性の両方が大切ですね。

 

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