× マネジメント

マネジメントの力で良くしてみよう

マネジメントなんかしていない

ありがちな目標達成プロセス

多くの企業で目標達成プロセスは同じような状況になっています。今回はよく見られる目標達成プロセスを取り上げます。結論から申し上げると、これは、マネジメントではありません。マネジメントに不可欠な「成果を生み出す」機能がないからです。何と呼んでいいかわかりませんので、なんとなくそれっぽい、「結果管理」と言っておきます。その結果管理の現状を見てみましょう。細かい点で違いはありますが、概ね次のようになっています。

経営者が目標を決める

全社目標は経営者が決めます。担当する各部門を目標を立てるプロセスに参加させる企業もありますが、多くの企業では、目標設定の背景や数値の根拠などをあまり詳細に説明せず、最後は経営者が承認して、具体的な目標値が決定事項として各部門に示されます。

このとき、簡単に達成できそうな目標は設定されません。株主や金融機関などの利害関係者に認めてもらわなくてはなりませんし、未来はより大きな成果を上げなければならないという「成長路線の呪縛」があるからです。

目標を部下に割り当てる

次に、経営者は割り当てた部門目標の達成を、部長のような上級のマネジャーに指示します。営業部長に売上目標の達成が課される、というようなことです。割り当てられた目標は、業務命令ですので、マネジャーは部門目標の達成に向けて責任を持って取り組まなければなりません。そこで、どうするかというと、上級マネジャーは、部門の目標を分割し、課長のような部下に割り当てます。そして、課長は係長に、係長は担当者個人に、というように繰り返され、組織の下へ下へと割り当ては続いていきます。

目標の達成プロセスは部下が担う

これに伴って、目標をどうやって達成するのかについても同じように、組織の下へ下へと委ねられます。部門の方針のような大きな指針は決めるものの、具体的にどういう施策を積上げて目標達成するのかについては、事前に深く関与して、詳しく検討する上司は極めて少数派です。
マネジャーは、途中で報告書や管理表などを使って部下の活動を確認します。しかし、達成が難しい状況でも、発破をかけることはあっても、活動をどのように軌道修正するべきかについて、具体的に検討して実行させるマネジャーはほとんどいません。ほぼ、部下に丸投げされていると言えるでしょう。

目標を達成できない部下は叱責され反省を促される

月次や四半期などの節目になると、目標の達成状況を上司に報告します。部下は、結果や問題点、今後どのように挽回するのかなどを明らかにします。
このとき、達成できた部下は賞賛を受け、反対に、達成できなかった部下は、マネジャーから叱責を受けたり、反省を促されたり、評価を下げられたりします。これと同じことが、組織の上へ上へとあがっていきます。最終的には、各部門の長が経営者に報告し、責任を果たせたかどうかの審判を受けることになります。

 

もちろん、これにピッタリと当てはまらない企業もありますが、概ねこのような状況に近いのではないでしょうか。

 

これはマネジメントとは真逆

この状況は、いったいどういうことなのかについて、考えてみます。

状況を簡単に要約すると、ポイントは次の4点です。

  • 達成が難しい高い目標が課される
  • 上司は部下に目標を割り当てる
  • 達成プロセスは部下に丸投げする
  • 達成できなければ、叱責を受けたり反省を促されたりする

この状況には大きく3つの問題があります。

 

1. 部下にとって上司が絶対的な存在になる

部下に目標を割り当て、達成プロセスを丸投げして、達成できなければ後から叱る
このとき、「達成できない」という間違いは、常に部下が犯すことになります。つまり、上司は絶対に間違わないのです。実質的に、上司は部下に対して、「お前が悪い」と言っている訳です。叱るということはそういうことです。問題は自分にあると、上司が考えれば、叱ることはできないからです。

部下から見ると、この関係は苦痛です。表向きは、上司と部下の関係・秩序が保たれますが、もはや信頼関係は成り立たないでしょう。多くの部下は、上司との精神的な距離を保ち、冷ややかに上司を見ています。

2. 上司が問題解決能力を失っていく

この状況では、上司は具体的な問題解決に直接関わっていません。月単位などで要約された情報を、事後的に見る。これでは、事実を把握することも、どうすればうまくいくのか考えを巡らせることも、決断することもできなくなってしまいます。日々の事実の把握、熟慮と行動を積み重ねなければ、問題を解決する力はどんどん失われていきます。これを繰り返していると、マネジャーは、成果を上げるという本来の役割をまったく果たせない存在へと成り下がっていきます。

3. 経験が十分でない人が活動の主人公になる

マネジャーは能力や実績を評価されて、その職位につきます。つまり、通常、部下よりも上司の方が、実務経験もそのとき発揮できる能力も高いとみることができます。
ところが、目標を部下に割り当て、達成を丸投げする状況では、目標達成のために、考え行動する主たる人物は、部下なのです。戦力が高く、より豊富な経験を持った人がいるのに、その人が具体的に達成プロセスに関与せず、目標を後から他人事のように追いかけているわけです。

 

これらを見ると、成果が上がらないのは当たり前です。数年連続して売上が減少している、赤字が続いている企業であっても、こうした状況が原因の大きな一つになっていると考える経営者はあまりいません。つまり、多くの企業では、マネジメントなんかしていないのです。

 これは裏を返せば、マネジメントをすれば、他の要因が同じであっても、大きな成果が出る余地が十分残っているということです。マネジメントは、人の営みですから、タダです。意識と行動を変えるのに、原則的に費用はかかりません。

 

私は、何としてもマネジメントへの正しい理解を広げたいと思うのです。