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答えがない世界で生きるということ

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答えがない世界で生きるということ

  いつもお読みいただきありがとうございます。
 組織のなかで活躍するには業務遂行能力に加えて、対人関係能力が必要になります。マネジャーになると、それらに加えて構想する能力も求められるようになる。マネジャーは実現したい将来を思い描き、そのための計画を立て、対話を通して人々を巻き込む。マネジャーはそういう役割を担うからです。マネジャーが生きる世界では、唯一絶対的な答えというものが存在しません。正解がない問いや、答えが1つとは限らない問いを立てて、それに対して答えを出す。マネジャーの活動とはそのようなものです。組織を動かす上では、この「答えのない」という性質が非常にマネジャーの活動を難しくしています。今回は、答えがない世界で、マネジャーはどのように生きていくのかについて、考えます。

答えがある世界

 答えがない世界とはどのようなものか。それを考える前に、答えがある世界を考えた方が話が早いと思います。答えがある世界とはどのようなものか。
 我々が学校で教わってきたこと、テストで問われてきたことは、原則として答えがある世界ですね。例えば、「1+1=2」、「大化の改新が起こったのは645年」などです。これらの答えがある問いは、答えを出したら、それで終わりです。唯一絶対的な答えがあるのですから、結論としての答えを出したら、それ以上議論をしても意味がありません。「私の場合、1+1=3だ」とはなりません。この世界では、答えをより多く、より正確に知っていることに価値が置かれます。
 では、答えがない世界とはどのようなものでしょうか。

答えがないことで陥りがちなこと

 唯一絶対的な答えがないということは、何でも良いということではありませんが、これが正解だと言い切ることもできません。答えがない世界で生きるのは非常に難しく捉えどころがないのですが、陥りがちな失敗には、典型的なパターンが見られます。代表的なものをいくつか挙げてみましょう。
・ 最初に良いと思った案が答えになる
・ 答えに納得が得られない
・ 影響力が強い人の意見が答えになる
・ 考えないで答えを出す
・ 答えを出すのにやたらに時間をかける
 いかがでしょうか? 最初に出た答えや時間をかけて出した答えが必ずしも良い答えとは限りませんし、多様な価値観を持つメンバーにいくら説明しても、答えがないのですから納得してもらえるとも限りません。お読みのあなたの会社でも当てはまるものがあるのではないでしょうか。

答えのない世界で生きるための要件

 答えのない世界では、文字通り答えがないのですから、一足飛びに結論に到達することはできません。一足飛びに出てきた結論は、勘や当てずっぽうと変わりありませんから、目の前の問題には良い答えが出るかもしれませんが、多様化・複雑化した現代の社会では、そうそう当たらないでしょう。
 では、どうすればよいのでしょうか。
 絶対的な答えがない世界では、答えを導き出すプロセスが非常に重要になります。そのプロセスは次の4つの要件を満たしている必要があります。
 ①議論する問いをはっきりさせる
 ②自分なりの答えを意見として出し合う
 ③出した複数の意見を比べる
 ④責任者が覚悟して決める
各々を簡単に整理してみましょう。

 

①議論する問いをはっきりさせる

 非常に単純な例に置き換えて考えてみましょう。
 店舗の開店祝いに「いちごのホールケーキ(大きな円形のケーキ)」を頂いたとしましょう。開店メンバー5人でそのケーキ分ける場合に、どのように分けたらよいでしょうか? この場合、「どのように分けたらよいか」というのが「議論する問い」になるのですが、この問いでは漠然としすぎていて、出した答えが良いのかどうか判断が難しいです。そこで、この問いをもう少し掘り下げて、はっきりさせてみましょう。
 「正確に均等にするには、どう分けるか」という問いにしたらどうでしょうか。この場合、答えとして、「イチゴの数と大きさを同じにする」という答えが導き出されるかもしれません。これに対して、「5人が納得するには、どう分けるか」という問いにしたらどうでしょうか。この場合には、「職位が一番下の人が切って、上の人から選ぶ」という答えが導き出せるかもしれません。このように、答えは一つではありませんが、問いをはっきりさせることによって、良い答えを考え出す指針が生まれます。

 

②自分なりの答えを意見として出し合う

 答えがないということは、正解も間違いもないということになりますが、どうすれば良い答えかどうか判断できるでしょうか。「唯一絶対的な答えがない」ということは、「相対的に答えを出す」しかないということを意味します。つまり、答えの候補として複数の意見を出し合って、それらを比較することで、良い答えを導き出すということになります。
 そのためには、常に自分なりの答えを持ち、それを口に出す必要があります。「発言しない人は、会議に出る資格がない」というようなことを耳にすることがありますが、問題解決型の会議では、間違いではないと言えるでしょう。特にマネジャーは、問題解決を生業にしているのですから、自分なりの意見を常に持って、積極的に発言しましょう。

 

③出した複数の意見を比べる

 答えのない世界では、「相対的に答えを出す」ことになりますから、意見を出し合った後は、それらを比較して、どれが最善なのかを判断します。
 この時、それぞれの意見について、思いつく限りメリットとデメリットを出して検討しましょう。自分とは違う意見に対しても、決して、頭ごなしに否定せず、まずは受け入れてみて冷静に検討することが肝要です。
 例えば、ある業務を、「外注すべきだ」という意見と「自社でやるべきだ」という意見が出たとします。「外注」の場合、ニーズに合う専門家の技術を活用できるというメリットがある一方で、自社にその業務のノウハウが貯まらないというデメリットが考えられます。反対に、「内製」の場合には、コストが低く変化に柔軟に対応できるメリットがある一方で、育成に時間と手間がかかるというデメリットがあるかもしれません。どちらの意見が良い答えなのかは、その時の状況や目的に合わせて検討すれば、判断は難しくないでしょう。

 

④責任者が覚悟して決める

 出し合った意見を比較した後は、もう決めるしかありません。唯一絶対的な答えがないのですから、いくら情報を集めても、比較して議論を続けていても答えには到達しません。答えがない世界では、答えは見つけるものではありません。つまり、「我々の答えはこれだ」と決めることで、「答えをつくる」しかありません。
 ただ、この「決める」というのは容易ではありません。なぜなら、決めるということは、結果に対して責任を負うということであり、出した答えに対する批判は甘んじて受け入れることを意味するからです。答えがない世界で答えを出すということは、そういうことなんです。

最後に

 いかがでしたでしょうか。答えがない世界で生きるということはどうことなのか、その世界で生きるマネジャーを念頭におきながら、できる限りわかりやすく書いたつもりです。この書き方にも答えがある訳ではありませんので、ご自身の経験と照らし合わせて、相対的にご自身の答えを出していただけたら幸いです。